fWARとbWARの違いとは?FanGraphsとBaseball Reference版WARを比較解説

fWARとbWARの違いを解説する記事のアイキャッチ図解。FanGraphs版とBaseball Reference版で異なるWARの算出方法や評価指標の差異、投手・野手それぞれの計算過程の違いを視覚的に整理し、両者の比較ポイントを示すイメージ セイバーメトリクス
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はじめに:同じ「WAR」なのに数字が違うのはなぜ?

同じ選手のWARを調べていて、サイトによって数字が違うことに気づいたことはありませんか?「FanGraphsの値とBaseball-Referenceの値が一致しない、どちらが正しいの?」という疑問は、セイバーメトリクスを学び始めた方が一度はぶつかる疑問です。

結論から言うと、どちらも間違いではありません。fWAR(FanGraphs版WAR)とbWAR(Baseball-Reference版WAR、別名rWAR)は、同じ「Wins Above Replacement(代替選手と比べて何勝分の貢献か)」というコンセプトを共有しながら、評価の出発点や守備指標が異なるため、数値がずれるのは自然なことです。特に投手では差が大きくなることがあります。

この記事では、その違いを初心者向けにやさしく整理していきます。WARそのものの基本はWAR(Wins Above Replacement)とは?選手の総合価値を勝利数で表す指標をやさしく解説で先におさらいしておくと理解がスムーズです。

fWARとbWARの違いを示す図解で、FanGraphs版は投手評価にFIP・野手守備にFRVを採用、Baseball-Reference版は実失点ベースとDRSを用いる点を対比し、算出元の違いから数値がずれる仕組みを視覚的に整理した比較イメージ

fWARとbWARの違いを一目で整理する比較表

まずは両者の違いを比較表で整理します。細かい計算式の前に、それぞれが「どこに重点を置いているか」を押さえると、後の説明が頭に入りやすくなります。

比較項目fWARbWAR
提供サイトFanGraphsBaseball-Reference
投手評価の土台FIPベース実失点を起点に各種補正
野手守備の主な評価現在はFRV中心DRS中心
投手で差が出やすい場面投球内容が優秀でも実失点が多い場合などFIP以上に実失点を抑えた場合など
向いている見方三振・四球・被本塁打を中心とした投球内容の評価実際に防いだ失点を含む貢献の評価

結論として、fWARとbWARはどちらかが正しい・間違いというものではありません。評価の出発点や守備指標が違うため、数値がずれるのは自然なことです。特に投手では、投球内容と実失点抑制の差から、両者が大きく開くシーズンが珍しくありません。

WARの前提:代替可能な選手と比べて何勝分か

WARは、代替可能な選手(リプレースメントレベル)と比べて何勝分の価値を生んだかを示す指標です。代替可能な選手とは、マイナーから昇格させたり、最低保証契約で獲得できたりするレベルの選手を指します。

FanGraphsとBaseball-Referenceは、この代替水準のチームをおおむね勝率.294前後、162試合なら約48勝のチームとして扱う共通の考え方を持っています。FanGraphsでは、この考え方をもとにMLB全体で1シーズン合計1,000 WARを配分する設計です。

ただし、打撃・走塁・守備・投球の評価方法が異なるため、個々の選手のfWARとbWARは一致しません。リプレースメントレベルそのものについては代替選手(Replacement Level)とは?で詳しく解説しています。

投手WARの違い:FIPベースか、補正後の実失点ベースか

fWARとbWARで最も差が出やすいのが投手評価です。それぞれ、評価の出発点が異なります。

  • fWARの投手評価:主にFIP(守備非依存投球指標)を土台にします。FIPは奪三振、四球、死球、被本塁打など、投手が比較的コントロールしやすい結果を重視する指標です。FIPの基本はFIPとは?防御率(ERA)の限界とFIPの登場で解説しています。
  • bWARの投手評価:実際の失点(RA9:9イニングあたりの失点)を出発点にし、そこから守備、球場、対戦相手の強さ、役割などを調整して投手分を取り出します。

整理すると、fWARは「内容を見るWAR」、bWARは「結果を補正して見るWAR」と捉えると分かりやすいです。ただし、bWARは単純に防御率だけを見ているわけではなく、守備や球場、対戦相手などを踏まえて補正したうえで投手の貢献を取り出しています。

fWARとbWARの差が大きくなりやすいのは、FIPが示す投球内容と、補正後の実際の失点抑制が大きく離れた場合です。

  • fWARが高くbWARが低い投手:投球内容は高評価でも、実際の失点が多かった可能性があります。
  • bWARが高くfWARが低い投手:FIPが示す内容以上に、実際の失点を抑えた可能性があります。守備に助けられた、走者を残さず切り抜けた、対戦相手や球場に恵まれずに失点を防いだ、といった要素が補正後にも残った場合です。

派生指標を理解しておくと違いがより腹落ちします。xFIP・SIERAなどはFIPの考え方を発展させた指標です。

野手WARの違い:FRVを用いるfWARとDRSを用いるbWAR

野手の守備評価でも、fWARとbWARでデータソースが異なります。

  • fWAR:かつてはUZRを中心に守備を評価していましたが、FanGraphsは2024年のWARアップデートで、2016年以降の守備評価についてStatcast由来の守備評価への移行を完了しました。現在の野手fWARでは、守備範囲、送球、捕手のフレーミングやブロッキングなどを得点換算したFRV(Fielding Run Value)が守備評価に反映されています。
  • bWAR:野手守備の評価には、Sports Info Solutions(旧BIS)が提供するDRS(Defensive Runs Saved)を採用しています。

UZRは過去のFanGraphs版WARで重要な役割を果たした指標ですが、現在の野手fWARの主な守備評価はFRV中心になっている点に注意してください。守備指標の中身そのものについてはDRS解説OAA解説キャッチャーフレーミング解説でそれぞれ深掘りしています。

同じ野手でも、守備評価で大きな差が出る年は、fWARとbWARの値がずれる原因になります。打撃や走塁の評価が近くても、守備の数値が指標ごとに違えば、最終的なWARも変わってきます。

また、パークファクターの作り方や、リーグごとの得点環境への補正方法もサイト間で異なります。具体的な係数や年度ごとの扱いは、公式定義を確認するのが確実です。

守備指標やパークファクターの違いがfWARとbWARの差を生む仕組みを示した図解。FanGraphsとBaseball Referenceで採用される評価方法やリーグ補正の相違点が、最終的なWAR値のズレにつながる流れを整理した内容

実例:アーロン・ノラ2018年のfWARとbWAR

fWARとbWARが大きくずれる投手の代表例として、2018年のフィラデルフィア・フィリーズに在籍したアーロン・ノラ投手のシーズンが挙げられます。

ノラは2018年に33試合に先発し、212回1/3を投げて17勝6敗、防御率2.37という成績を残しました。当時のナショナル・リーグでもトップクラスの成績です。

項目2018年アーロン・ノラ
所属フィラデルフィア・フィリーズ
登板33先発
投球回212回1/3
勝敗17勝6敗
ERA(防御率)2.37
FIP(FanGraphs上の表記)約3.01
fWAR(FanGraphs)5点台半ば
bWAR(Baseball-Reference)10点台前半

ポイントを整理します。

  • ノラはFIPの面でも優秀で、奪三振や被本塁打のバランスから見ても良いシーズンでした。
  • それに加えて、防御率2.37という実際の失点抑制が非常に優れていたことが、この年の特徴です。
  • そのため、実失点を起点に補正して評価するbWARでは、FIPを土台にするfWARよりも大きな評価になりました。

この差は「どちらが正しいか」を意味するものではなく、評価の切り口が違うために生まれた差と捉えるのが適切です。FIPの内容を見るfWARでも十分高評価のシーズンですが、実失点ベースで補正したbWARでは、ノラがリーグ屈指の貢献を残したシーズンだったとより強く読み取れます。こうした例を見ると、投手のWARは片方だけでなく両方を見る価値があると分かります。

具体的な小数点以下の値は、FanGraphsBaseball-Referenceの該当シーズンページで確認してください。

fWARとbWARはどちらを見ればよい?初心者向け判断ガイド

「結局、fWARとbWARのどちらを見ればよいの?」と迷ったときの判断ガイドを整理します。「差が出た理由を考える入口」として使ってみてください。

  • まずは両方を確認するのがおすすめです。サイト名を併記して数値を引用する習慣をつけると、議論がぐっと正確になります。
  • fWARとbWARが近い場合は、どちらの視点でも概ね高く評価されていると考えやすいシーズンです。
  • fWARの方が大きく高い場合は、FIPが評価する投球内容(奪三振・四球・被本塁打のバランスなど)に注目すると、評価の根拠が見えてきます。
  • bWARの方が大きく高い場合は、実際の失点抑制や補正後の結果(守備の助け、対戦相手、球場の影響など)に注目すると、評価の背景が読みやすくなります。
  • 野手で差が出た場合は、守備評価指標の違いが原因になっていることがあります。FRVやDRSなどの守備指標を別途確認すると理解しやすくなります。

どちらか一方を「正解」と決めず、両者を並べて差の理由を読み解くのが、現代的なWARの楽しみ方だと言えます。

NPBのWAR(1.02 Essence of Baseball)を見る際の注意点

日本のNPBについては、DELTA社が運営する1.02 Essence of Baseballが独自のWARを公開しています。打者WAR・投手WAR・守備WARなどの内訳構造を持ちますが、参照する得点期待値テーブルやリプレースメントレベルはNPB環境に合わせた独自設計です。

  • NPBで公開されるWARは、MLBのfWARやbWARと完全に同一の算出方式ではありません
  • 同じ「WAR」という名称でも、提供元や算出ロジックによって数値は異なります
  • NPB選手を比較する際は、同じ提供元・同じ年度・同じ算出基準の数値で比較することが重要です。

NPBの数値とMLBの数値を直接比べる際は、定義の違いに注意してください。NPB版WARとMLB版WARの違いの全体像は、別記事でも整理予定です。

注意点:WARは万能ではない

  • WARは複数の要素を勝利数換算で総合する指標であり、計算方式によって値がずれるのは仕様です。
  • 守備指標は標本サイズの影響を受けやすく、特に1シーズン未満のWARを過信しないようにしましょう。
  • fWARとbWARを混ぜて議論すると数字が合わなくなります。比較するときは必ず同じシステムで揃えるのが鉄則です。

まとめ

fWARとbWARの違いは、ひとことで言えば「投手の土台がFIPベースか、補正後の実失点ベースか」「野手守備の評価がFRV中心かDRS中心か」という設計思想の違いです。どちらが優れているという話ではなく、見たい角度に応じて使い分けるのが現代的な楽しみ方と言えます。

サイト名を必ず併記して数値を引用する習慣をつけると、議論がぐっと正確になります。投手で大きな差が出たシーズンや、守備評価指標が違う野手のシーズンは、両方のWARを並べて差の理由を読み解いてみてください。

参考文献

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