FIPとは?防御率では見えにくい投球内容を測る指標を解説

FIP(Fielding Independent Pitching)の解説アイキャッチ。防御率では見抜けない投手の真の実力を、三振・四球・本塁打から再構築する計算式や目安、MLB/NPB実例、xFIP・SIERAとの違いを示すセイバーメトリクス指標の図解 セイバーメトリクス
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はじめに:ERAだけでは見えにくい投球内容

FIP(Fielding Independent Pitching)は、三振・四球・死球・被本塁打という、守備の影響を受けにくく投手の責任が比較的大きいイベントから、投球内容をERAと同じようなスケールで見る指標です。

防御率(ERA)には守備、BABIP、シーケンス、球場などの影響が混ざります。FIPはその中から、投手が比較的コントロールしやすい要素に絞って評価するため、ERAだけでは見えにくい投球内容を確認するのに役立ちます。

ただし、FIPは万能な真の実力値ではありません。打球の質、球場、投手タイプ、被本塁打の揺れ、サンプルサイズも合わせて見る必要があります。

奪三振・与四球・与死球・被本塁打の4要素から、守備やBABIPの影響を受けにくい形でERAと同じスケールで投球内容を見るFIPの考え方を示した図

結論:FIPの意味・使い方・注意点

まずは要点を表で整理します。

項目内容
FIPとは三振・四球・死球・被本塁打から投球内容を見る指標
何を除くかインプレー打球の結果、守備、BABIP、シーケンスの影響をできるだけ切り分ける
スケールERAと同じような防御率スケール
低いほど良い
向いている用途ERAだけでは見えにくい投球内容の確認
注意点打球の質、球場、投手タイプ、少ない投球回のブレは見逃しやすい
関連指標ERA、xFIP、SIERA、FIP−、BABIP、LOB%

FIPは「ERAより正しい数字」ではなく、ERAとは別の角度から投手を見るための指標です。ERAは実際の失点結果、FIPは守備の影響を切り分けた投球内容を見る入口として使うと理解しやすいです。

FIPとは?防御率と同じスケールで投球内容を見る指標

FIPは、三振・四球・死球・被本塁打という、守備の影響を受けにくいイベントを使い、ERAと同じような点数スケールで投手の投球内容を整理する指標です。値の読み方はERAと同じで、低いほど良いと捉えます。FanGraphsやMLB公式、1.02などで公開されています。

なぜERAだけでは投手を測りにくいのか

防御率は「9イニングあたり何点取られたか」を示す指標で、長年にわたり投手評価の中心として使われてきました。ただし、防御率には投手の責任ではない要素も混ざっています。

  • 同じゴロでも、遊撃手の正面なら併殺、半歩横にずれればヒットで、結果が変わります。
  • 外野手の守備範囲、ボールパークの広さ、味方のエラー、引き継ぎ救援投手の出来など、投手本人だけでは決まらない要素が含まれます。

この問題は 打率・打点・勝利数の限界 でも触れているとおり、伝統的指標が抱える共通の弱点です。これを解きほぐすために生まれたのがFIPです。

DIPS理論というルーツ

2001年、Voros McCrackenが「投手はインプレー打球が安打になる確率(BABIP)を大きくはコントロールしにくい」という仮説を提示しました。これがDIPS(Defense Independent Pitching Statistics)の入口です。FIPはその実用版として広まりました。

  • 多くの投手で、BABIPは短期的に大きくブレます。
  • 長期的にはリーグ平均付近へ戻りやすい傾向があります。
  • ただし、打球の質、守備、球場、投手タイプによって差が出る場合もあります。
  • 「投手はBABIPに一切関与できない」とまでは言えません。

BABIPの中身は BABIP(インプレー打率)とは? でも詳しく扱っています。

FIPの計算式

FanGraphsやMLB公式で採用される基本式は次のとおりです。

FIP = (13×HR + 3×(BB + HBP) − 2×K) ÷ IP + 定数(constant)
  • HR:被本塁打。最も失点に直結するため係数13と重い。
  • BB:与四球。HBP(与死球)も同じ重みで加える。
  • K:奪三振。投手側のプラス要素のためマイナス係数。
  • IP:投球回。アウト数を3で割った値。
  • 定数:その年・そのリーグの平均ERAにスケールを合わせる補正項。おおむね3.0〜3.2前後の値が使われます。

係数 13・3・−2 は、過去のリーグ全体のデータから、本塁打・四球・三振が失点にどれくらい寄与しているかを推定した重みです。絶対的な数式というより、リーグ平均から見たズレを点数に翻訳するための重みとして捉えてください。

FIP計算式の構造を示した図。被本塁打・与四球・与死球・奪三振・投球回・定数の関係と、各イベントの重み付け、リーグ平均ERAへスケールを合わせる補正項を整理

補足:1.02では故意四球を除いた式で説明される

FanGraphsやMLB公式では、BB + HBP を使うFIP式がよく紹介されます。一方、1.02では、与四球から故意四球を除いた形でFIPを説明しています。

1.02のFIP説明:
FIP = (13×被本塁打 + 3×(与四球 − 故意四球 + 与死球) − 2×奪三振) ÷ 投球回 + 定数
  • 1.02では、定数はリーグ全体の失点率に合わせる形で説明されています。
  • 正確には、各イベントの係数はシーズンごとに異なると説明されています。
  • MLBとNPB、またはサイト間でFIPを比較するときは、同じ提供元・同じ算出基準の値を見るのが安全です。

架空投手でFIPを計算してみる

抽象的な式を眺めるより、一度数字を入れた方が早いです。架空の投手(奪三振180・与四球40・与死球5・被本塁打15・投球回180、定数3.10)で計算してみます。

分子: 13×15 + 3×(40+5) − 2×180
    = 195 + 135 − 360
    = −30

FIP = −30 ÷ 180 + 3.10
    = −0.167 + 3.10
    ≒ 2.93

三振が四球の4倍以上ある投手は分子がマイナスになり、定数(リーグ平均)から引き算されて優秀な値になります。逆に被本塁打や与四球が多ければ、分子が膨らみ定数より大きな値に近づきます。

ERAとFIPの差をどう読むか

FIPとERAは同じ点のスケールに揃えてあるため、並べるとズレが直感的に見えます。読み方の入口は次のとおりです。

  • ERA > FIP:防御率は悪いが、三振・四球・死球・被本塁打だけを見ると内容はそこまで悪くない可能性があります。守備、BABIP、シーケンスで損をしている可能性があるため、改善候補として注目できます
  • ERA < FIP:実際の失点は少ない一方で、FIP上はそこまで良くない可能性があります。好守備、低BABIP、高いLOB%、被本塁打抑制、投手固有の打球管理などを確認する必要があります。

注意点も合わせて押さえておきましょう。

  • すべてを「運」と決めつけないようにしてください。
  • 打球の質、球場、投手タイプ、守備、複数年の傾向も合わせて確認します。
  • ERAとFIPの差は「疑問を持つ入口」であり、結論そのものではありません。

FIPの目安・平均値

FanGraphs LibraryのFIP目安(2016年の得点環境を基準)はおおむね次のとおりです。

FIP目安
3.20Excellent
3.50Great
3.80Above Average
4.20Average
4.40Below Average
4.70Poor
5.00Awful
  • これは2016年の得点環境を基準にした目安です。
  • リーグ平均FIPは年度によって変わります
  • NPBや過去年度を見る場合は、その年度・リーグの平均と比べるのが安全です。
  • リリーフ投手は先発投手より低い値になりやすいため、役割も考慮します。

ERAとFIPがズレる3パターン(架空例)

現役選手のシーズン数値は日々変動するため、ここではERAとFIPの典型的なズレ方を架空投手のパターンで整理します。

パターンERAFIP読み方
ERA > FIP4.203.20内容より失点が多く見えている可能性。守備・BABIP・シーケンスを確認
ERA < FIP2.603.80守備・BABIP・LOB%・被本塁打抑制を確認
ERA ≒ FIP3.403.50結果とFIP上の内容が近い
  • 結果と投球内容の評価が近い投手もいます。
  • 差がある投手は、改善候補として注目できるケースもあれば、好守備や打球管理に支えられているケースもあります。
  • 実在選手のERAとFIPは、FanGraphsまたは1.02の選手ページで取得時点を明記して確認するのが安全です。
ERAとFIPがズレる3パターン(ERA>FIP、ERA<FIP、ERA≒FIP)を示した図。守備・BABIP・シーケンスの影響と投球内容を切り分けて読む例

xFIP・SIERAとの違い

FIPは実際に許した被本塁打をそのまま使う指標です。xFIPは、実際の被本塁打数ではなく、外野フライ数とリーグ平均HR/FB率から推定した被本塁打を使います。SIERAは、三振・四球・ゴロ率などの組み合わせをより複雑に扱うERA推定指標です。

将来を見るときに xFIP や SIERA は役立ちますが、どれか1つだけを正解として使うのではなく、FIP、xFIP、SIERA、HR/FB、BABIP、球場、投手タイプ、複数年の傾向を合わせて確認するのがおすすめです。

指標何を見るか注意点
FIP実際の三振・四球・死球・被本塁打から投球内容を見る被本塁打の揺れを受ける
xFIP被本塁打をリーグ平均HR/FBへならして見るHR/FBを抑える投手を過小評価する場合がある
SIERA三振・四球・打球傾向の組み合わせを見る式が複雑で、単独で結論にしない

派生指標の中身は xFIP・SIERAとは? もあわせてご覧ください。

FIPの限界・誤用しがちなポイント

  • 打球の質を直接見ない:弱いゴロと強いライナーの違いはFIPだけでは拾いにくいです。
  • 被本塁打の揺れを受ける:被本塁打は係数が大きく、短期ではFIPが大きく動きます。
  • 通常のFIPは球場・リーグ補正なし:比較にはFIP−が便利です。
  • 投手固有の特徴を見逃す場合がある:ポップフライ、ゴロ傾向、ソフトコンタクト、牽制・走者抑制などはFIPだけでは捉えにくいです。
  • 少ない投球回ではブレやすい:特にリリーフやシーズン序盤は注意してください。
  • ERAの代替ではなく補助指標:実際に失点を防いだ結果としてERAやRA9も重要です。

BABIPやLOB%の揺れは 被BABIP・LOB% でも整理しています。投手WARとの関係は WARの見方入門 もあわせてどうぞ。

FIP−とは?リーグ・球場補正込みで見る指標

FIP−は、FIPを球場・リーグ環境で補正し、リーグ平均を100として表示した指標です。投手指標なので、100より小さいほど優秀です。たとえばFIP− 90なら、その年度・リーグ・球場補正後で平均より約10%良い投球内容だった、と読めます。

  • FIP−は、通常のFIPより年度・リーグ・球場をまたいだ比較に向く指標です。
  • ERA+は大きいほど良いですが、FIP−は小さいほど良い点に注意してください。
  • 100基準の指標全般の読み方は プラス指標と100基準の読み方 で整理しています。

実戦でどう使うか

三ステップで運用できます。

  1. FanGraphs・Baseball-Reference・Baseball Savantの使い方 を参考に、FanGraphsのPitching Leaderboardを開きます。
  2. ERAとFIPを並べ、差が大きい投手をピックアップします。
  3. xFIP・BABIP・LOB%・球場補正(FIP−)まで見て、投手タイプも含めて判断します。

FIPの数値そのものより、ERAとのギャップを読む癖をつけるのが、初心者にとってコスパの良い使い方です。値を断定的に評価するのではなく、複数指標と文脈をあわせて読むのが安全です。

参考リンク

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