UBR・wSB・XBRとは?走塁指標BsRの中身とNPBでの見方を解説

走塁指標BsRの構成要素であるUBR・wSB・XBRの意味と算出ロジック、NPBでの活用方法や評価の見方をまとめたセイバーメトリクス解説記事のアイキャッチ図解。走者の進塁や盗塁、その他走塁プレーが得点へ与える価値を可視化 セイバーメトリクス
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はじめに:盗塁だけでは走塁価値を測れない

野球を見ていると、盗塁だけでなく、シングルヒットで一塁から三塁まで進む走塁や、外野フライでのタッチアップ、走塁死を避ける判断が試合を動かすことがあります。盗塁数だけでは、こうした走塁価値は見えてきません。

本記事は、走塁価値を測る個別指標である wSBUBRXBR の違いと、FanGraphs・Baseball Savant・1.02 でのBsRの構成の違いを整理する補助記事です。現行FanGraphsのBsR全体の読み方や目安は、BsRの解説記事でまとめています。

結論:wSB・UBR・XBR・BsRの違い

細かい説明の前に、各指標の役割を表で整理します。

指標何を評価するか主に確認する場面
wSB盗塁・盗塁死による得点価値FanGraphs・1.02
UBR盗塁以外の走塁による得点価値旧来のFanGraphs・1.02
XBRStatcastによる打球時の追加進塁のラン価値現在のFanGraphsのMLBデータ
BsR走塁全体の得点価値構成要素は提供元・年代で異なる
  • 旧来のFanGraphス:BsR = UBR + wSB + wGDP
  • 現在のFanGraphs(2016年以降のMLB):BsR = XBR + wSB
  • 1.02(NPB):BsR = UBR + wSB

同じBsRでも、提供元や対象年代によって中身は違います。BsRの読み方や評価帯は、BsRの解説記事を先に確認しておくと理解がスムーズです。

盗塁数だけでは走塁を評価できない理由

「盗塁王=走塁が上手い選手」と思いがちですが、ちょっと待ってください。たとえば盗塁を30回成功させても、20回失敗していたら、チームにとってはむしろマイナスかもしれません。盗塁の損益分岐点で触れた通り、盗塁は成功確率が一定の水準を上回らないと、得点期待値の面でプラスになりにくいからです。

さらに走塁の価値は盗塁だけではありません。たとえば次のようなプレーも、得点へつながる走塁です。

  • シングルヒットで一塁から三塁まで進む
  • 外野フライでタッチアップして進塁する
  • ゴロや外野への打球で本塁を狙う
  • 暴投・捕逸で進塁する
  • 進塁を狙って走塁死になることを避ける判断

こうした進塁判断や走塁死を避けた価値は、走塁プレーによる得点期待値の変化をラン単位で評価する指標で確認できます。

概念図解で示すUBRの評価対象イメージ。シングルヒットでの一塁から三塁への進塁、タッチアップ、暴投・捕逸時の進塁、走塁死回避の判断など、盗塁数だけでは捉えきれない走塁価値をラン単位で数値化する考え方

wSBとは?盗塁・盗塁死の得点価値

wSB(Weighted Stolen Base Runs) は、盗塁成功と盗塁死によって、平均的な走者と比べて何点分の価値を生み出したかを表す指標です。wOBAと同じくリニアウェイトの考え方を使っています。FanGraphsで用いられてきた計算式は次のように表されます。

wSB = (SB × runSB) + (CS × runCS) − lgwSB × (1B + BB + HBP − IBB)
  • SB:盗塁成功
  • CS:盗塁死
  • runSB:盗塁成功1回のラン価値
  • runCS:盗塁死1回のラン価値
  • lgwSB:リーグ平均の盗塁価値を調整する項
  • 1B + BB + HBP − IBB:盗塁を試み得る出塁機会を近似する項

この式では、盗塁数だけでなく盗塁死による損失を含め、さらに出塁機会の違いを考慮して平均的な走者と比較します。1B + BB + HBP − IBB は、すべての盗塁機会を完全に数えた値ではなく、平均との比較のための近似的な考え方です。

盗塁成功・盗塁死のラン価値の目安

盗塁成功や盗塁死のラン価値は、得点環境や使用する指標体系によって多少変わります。目安として、盗塁成功はおよそ +0.2 ラン、盗塁死はおよそ -0.4〜-0.45 ラン程度の価値として扱われます。Baseball Savantの現行 Basestealing Run Value では、盗塁またはボークによる進塁を約 +0.2 ラン、盗塁死または牽制死を約 -0.45 ランとして説明しています。

FanGraphsのwSBとBaseball SavantのBasestealing Run Valueは、どちらも盗塁関連の得点価値を見る指標ですが、同一の指標として扱わないでください。上記の +0.2-0.4〜-0.45 はあくまで目安であり、指標体系や得点環境によって異なります。盗塁成功率の損益分岐は、盗塁の損益分岐点で詳しく解説しています。

UBRとは?旧来のFanGraphsと1.02で使われる走塁指標

UBR(Ultimate Base Running) は、盗塁・盗塁死を除く走塁プレーについて、平均的な走者と比べて何点分の価値を生み出したかを表す指標です。従来のFanGraphsでは、次のようなプレーを評価するBsRの構成要素として用いられていました。

  • 安打で一塁から三塁へ進めたか
  • 二塁から単打で本塁へ生還できたか
  • 外野への打球で追加の塁を奪えたか
  • タッチアップで進塁できたか
  • 進塁を狙って走塁死になったか
  • 暴投・捕逸時に進塁できたか

UBRは、進塁した回数だけでなく、その場面で平均的な走者がどの程度進めるかと比べて評価します。簡単に進める場面で進塁しても大きな価値にはならず、難しい場面で追加の塁を奪えればプラス評価になりやすい、という考え方です。

FanGraphsは2024年の更新により、Statcastデータが利用できる2016年以降について、UBRとwGDPをXBRへ置き換えました。現代MLB選手をFanGraphsで見る場合、盗塁以外の走塁価値を確認する主な指標は、旧来のUBRではなく次に紹介するXBRです。一方、NPBの1.02では現在もUBRが走塁貢献を見る重要な構成指標として使われています。

UBRの考え方を示す概念図で、走者が平均的な進塁度合いと比較して追加で奪った塁をラン価値に換算する仕組みを表現し、NPBの1.02でも採用される走塁貢献指標としての位置付けを視覚的に整理した内容

XBRとは?現在のFanGraphsで使われる追加進塁評価

XBR は、Statcastによって評価される打球時の追加進塁のラン価値です。FanGraphsでは、2016年以降についてUBRとwGDPに代わってXBRがBsRおよびWARへ反映されています。

XBRでは、走者の位置、打球、守備側の送球などを踏まえて、追加の塁を奪った価値やアウトになった損失を評価します。具体的には、Statcastの追加進塁(extra bases taken)に関する情報を用い、次のような結果をラン価値として算出します。

  • 追加の塁を奪えた
  • 進塁を狙ってアウトになった
  • 進める可能性があったが進塁しなかった

UBRと目的は近いですが、トラッキングデータを使う現行指標として区別して読みましょう。XBRはStatcastデータに依存するため、2016年以降のMLBデータが対象です。

BsRの構成は提供元と年代で異なる

BsR(Base Running) は、平均的な走者と比べて、走塁で何ランの価値を生み出したか、または失ったかを表す走塁総合指標です。BsRの細かい目安や読み方は、BsRの解説記事でまとめています。本記事では、BsRが提供元・対象年代によって構成要素が異なる点を整理します。

旧来のFanGraphs

BsR = UBR + wSB + wGDP
  • UBR:盗塁以外の走塁価値
  • wSB:盗塁・盗塁死の価値
  • wGDP:併殺回避の価値

現在のFanGraphs(2016年以降のMLB)

BsR = XBR + wSB
  • XBR:Statcastによる打球時の追加進塁のラン価値
  • wSB:盗塁・盗塁死による価値

1.02(NPB)

BsR = UBR + wSB
  • UBR:盗塁・盗塁死を除く走塁による得点貢献
  • wSB:盗塁・盗塁死による得点貢献

BsRはFanGraphsの野手 WAR に含まれる走塁要素の一つです。対象年代によって利用される構成指標が異なるため、過去選手と現代選手を比較するときは定義の違いに注意してください。BsR全体の読み方や評価帯は BsRの解説記事を参照してください。

Baseball SavantのBaserunning Run Valueとの関係

Baseball Savantでは、Statcastを用いた Baserunning Run Value を確認できます。これは、次の2種類の走塁価値を合計した総合指標です。

  • Basestealing Run Value:盗塁、盗塁死、牽制死、ボークによる進塁などの価値
  • Extra Bases Taken Run Value:安打や外野への打球で追加の塁を奪った価値

FanGraphsの2016年以降のBsRと、Baseball SavantのBaserunning Run Valueは、どちらもStatcastを用いて現代の走塁価値をラン単位で捉えるための指標です。ただし、同じ名称ではなく、構成も完全に同一とは限りません。FanGraphsのBsRとBaseball SavantのBaserunning Run Valueを同一指標として扱わないでください。詳細は Baserunning Run Value Leaderboard で確認できます。

実例:トレイ・ターナーの走塁価値

Baseball SavantのBaserunning Run Valueでは、トレイ・ターナーは2016〜2024年に合計 +55 ランを記録し、対象期間でも特に価値の高い走者として紹介されています。

指標2016〜2024年の値
Baseball Savant Baserunning Run Value+55
Basestealing Run Value+28
Extra Bases Taken Run Value+27
  • 上記はBaseball SavantのBaserunning Run Valueに基づく数値であり、FanGraphsのBsRそのものではありません。
  • 「Statcast時代で最も価値の高い走者」という表現は、Baseball Savant公式画面の対象期間に基づく表現です。
  • 編集時にはBaseball Savant公式ページで再確認することをおすすめします。

この例から分かるのは、優れた走者の価値は盗塁数だけでは捉えきれないということです。盗塁で価値を生み出すだけでなく、安打や外野への打球で追加の塁を奪う判断も、同じ程度の得点価値を生む場合があります。

NPB・1.02でのBsR、UBR、wSBの読み方

NPBでも、1.02 Essence of Baseball で走塁指標を確認できます。1.02公式の説明では、走塁貢献を表す総合指標と、その構成要素が次のように整理されています。

1.02のBsR(Base Running)
= UBR + wSB
  • UBR:盗塁・盗塁死を除く走塁による得点貢献
  • wSB:盗塁・盗塁死による得点貢献
  • BsR:両者を合算した走塁全体の得点貢献

提供元・年代によるBsR構成の比較

提供元・対象BsRの主な構成
従来のFanGraphsUBR + wSB + wGDP
現在のFanGraphs・2016年以降のMLBXBR + wSB
1.02・NPBUBR + wSB
  • 同じBsRという名称でも、FanGraphsと1.02では構成要素が異なります。
  • MLB選手とNPB選手のBsRを、そのまま横並びで比較しないでください。
  • NPB内で比較するときも、同じ提供元・同じ年度・同じ算出基準の数値を使うのが安全です。

注意:1.02のBsRには「Base Running」と「Base Runs」がある

1.02では、走塁貢献を表す BsR(Base Running) に加えて、得点創出モデルとしての BsR(Base Runs) が登場する場合があります。略称が同じでも意味は異なるため、混同しないように注意しましょう。

  • 本記事で扱うBsRは、UBRとwSBを合算した走塁貢献の Base Running です。
  • Base Runs は、打者やチームがどれだけ得点を生み出したかを推定する別の指標です。
  • 略称が同じでも意味は異なるため、指標ページの正式名称を必ず確認してください。

指標体系の比較表(MLBとNPB)

MLBとNPBで、同じ価値を見るためにどの指標が使われるかを比較します。スマホ幅で読みやすくするため、MLBとNPBで表を分けています。

MLB:FanGraphs旧来・現行・Baseball Savant

見たい価値従来のFanGraphs現在のFanGraphs(2016年以降)Baseball Savant
盗塁・盗塁死wSBwSBBasestealing Run Value
追加進塁UBRXBRExtra Bases Taken Run Value
併殺回避等wGDPXBRへ置換定義を確認
走塁全体UBR + wSB + wGDPXBR + wSBBaserunning Run Value

NPB:1.02との比較

見たい価値1.02(NPB)
盗塁・盗塁死wSB
追加進塁UBR
併殺崩し等UBR側の定義を確認
走塁全体UBR + wSB

同じ「走塁価値」を表す指標でも、サイトや対象期間によって構成要素は異なります。Baseball SavantとFanGraphsの構成も完全一致と断定しないでください。

注意点と限界

  • 走塁機会は打席数ほど多くない:単年の数値は数回の進塁成功・走塁死で大きく動くことがあります。
  • 速さだけを測る指標ではない:走塁価値にはスタート、判断、相手守備、場面なども関係します。
  • 指標の定義はサイトと年代で異なる:FanGraphsでは2016年以降、UBR・wGDPではなくXBRが使われます。
  • MLBとNPBでは利用できるデータや指標体系が異なる:数値を直接比較する際は定義を確認する必要があります。

単年の値だけで「走塁が上手い・下手」と断定するのではなく、対象年度、指標の定義、必要に応じて複数年の傾向を確認しましょう。

まとめ

走塁の価値は、盗塁数だけでは分かりません。盗塁死による損失、安打での追加進塁、タッチアップ、走塁死を避けた判断なども、得点へつながる重要な要素です。

  • wSB:盗塁・盗塁死による得点価値
  • UBR:旧来のFanGraphsや現在の1.02で扱われる、盗塁以外の走塁価値
  • XBR:現在のFanGraphsで2016年以降のMLB追加進塁評価に使われるStatcast指標
  • BsR:走塁全体の得点価値。従来のFanGraphsは UBR+wSB+wGDP現在のFanGraphsは XBR+wSB1.02は UBR+wSB
  • Baserunning Run Value:Baseball Savantで確認できる、盗塁と追加進塁を合わせた走塁価値(FanGraphsのBsRと同一視しない)。

BsR全体の読み方や評価帯は、BsRの解説記事で詳しく紹介しています。本記事と合わせて確認すると、現行FanGraphsとNPB・1.02の走塁指標を整理しやすくなります。

参考文献

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